ドラマ「高嶺の花」こぼれ話その2

2018.10.13 18:02

毎回考えさせられた場所は、なんと言っても月島家。月島流本家ということで、こちらでも山のようにいけましたが、特に客間の大きな床の間が大変でした。幅3メートルもあるんですよ。大きいいけこみって、花材を運ぶだけでも重労働です。ほぼ大工作業のようです。一番のお気に入りはこれ。

ちょっと横から見たのも好きです。緑の葉はがまです。木とがま以外、何も花は入れませんでした。そのほうが、がまの美しい強さが表現できると思ったからです。

こちらもお気に入り。ガジュマルという南国の植物の蔓や根を組み合わせて骨格にしました。家元市松の圧倒的な存在感を示すためにいけた作品です。

こちらは結婚式用の祝い花。ドラマの中では、いろいろあったけど、舞台裏では、とっても仲の良い4人で、こうやって撮影すると、まるで仲良しファミリーのよう。

こちらは大山木という大好きな花材を鮮やかなピンクの百合と一緒にいけました。右側は流木。流木の荒々しさ、本当に美しくて、隠しすぎないように気をつけていけています。

床の間以外にもいろいろな場所でいけました。月島家は、「遠山記念館」という博物館をお借りして撮影しています。素晴らしい日本家屋なのですが、ひとつつらかったのは、クーラーがないこと。サウナのように、灼熱でした。

これは廊下に、枝垂れ桑、テッセン、アスパラガス・プルモーサスをいけたもの。

こちらは、苔がついた梅、苔梅を使いました。

こちらは夏はぜをいけました。高級花材です。

こちら小日向さん演じる市松の仕事部屋(スタッフの間では通称市松部屋と呼ばれていました)でも、たくさんいけました。かなり広い日本間なので、床の間にいけ、奥の窓の側にいけ、市松の前にいけ横にいけ、とこの部屋のシーンがある度に大忙しです。詳しくはInstagaramか番組HPのいけばなギャラリーに掲載していますが、特に思い入れのあるものを。

市松のいける「光と影」を表現したつもりです。美しい盆栽の枯れ枝を見つけて、影の部分に見立てました。こういうがっつりしたものは、いけるのが難しいのです。でも、市松がいけるというカットが多くて、一体どこの部分をいじってもらったらいいのか、苦労しました。初心者向きの花材を選べばやりやすいけれど、家元には見えないし、家元っぽくすると、さわるのが難しいし。ジレンマに襲われました。

これも市松がいけるというシーンのもの。ひとつのシーンを撮影するのに、通常10回以上同じ芝居を繰り返すので、枝を切るシーンがあれば、10本枝を用意して、そのたびに切らないとシーンがつながらないのです。そういうことにも気を配りました。

これは、スタッフみんなにすごく好きだと言ってもらえた花。ただ、灼熱のため、花びらがぼろぼろ落ち、何度もいけ直しました。サウナのように暑いので、カメラが回っていない時間は巨大扇風機を回すのですが、そうすると、花が見事に散ってしまう。かと言って、扇風機なしには、スタッフが死んでしまう。扇風機がまわるたびに花を板で囲って、保護しながらの撮影でした。特にハスの花はもろいのです。でも、大事なシーンだったので、「運命」「天の掟」みたいなものを匂わせたくて、どうしてもハスをいけたかったシーンです。

ブルー系のお花は、あまりの灼熱で(多分体感温度は40度を上回ってました)うだっているときに、癒されます。自分でいけて、自分で癒されたりもしました。

こちらは、市松と妻るり子の最後のシーン。2人のハッピーエンド、幸せを願って、「愛の花」をいけて欲しいとのリクエストで、アンスリウムをハートに見立てて、いけました。

ももが市松より「家元に!」と言われるシーンでは、巨大な杉の木の皮を使用し、「ももよ、厳しい頂を目指せ」という市松のメッセージをこめました。

いけばなは、「生きている彫刻」と呼ばれることがあります。草月流では、オブジェのような作品を作ることも多く、特に私の好きな分野です。オブジェと言えば、龍一のマンションにもオブジェを制作しました。

龍一のキャラ設定は、いつも闇をかかえた人。闇を表現できるように、いつももがいていました。

こちらも龍一のマンションのオブジェ。木のうろを使っています。

同じうろをつかった別の作品。

話をまた元に戻して、月島家のいけばなに。月島家の執務室ということで、「草月会館」でも撮影しました。

草月会館5階の日本間というところです。いつも訪れている場所が撮影場所になって、不思議な気分でした。いつものお稽古場はメイク室に早変わり。撮影はハードですが、役者のみなさんやスタッフが最高で、体はぼろぼろだけど、心はいつもハッピーな毎日でした。

もう一回だけ、最後はもものいけばなについて語って、終わりにしようと思います。

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番組HPの「生け花ギャラリー」はこちらです。

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